ゲシュタルト療法をファシリテートする、心理療法の専門家「ファシリテーター」がワークショップの雰囲気やセッションの内容などに触れるブログを紹介しています

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ファシリテーター:上谷 和美

上谷 和美

2009年大阪みどり会でゲシュタルトに出会い、2013年度GNKにてアドバンスコースを修了。2017年企業に勤めながらインフィニティーを主宰、2022年からインフィニティーを本業として活動開始。非二元の目覚めのプロセスをサポートしている。

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人生の困難な時

2025年4月23日 18:07

いきなり暗い話になりますが、先月(3月)に主人が他界しました。
昨年5月に癌と診断され、その時にステージ4で余命3か月~半年と宣告を受けましたが、10か月間生きることができ二人で力を合わせて『生きる』と云う体験をすることができました。

この10か月間は治療のために毎週通院し、最期も自宅で看取るため介護もしていましたので、体力と精神力の戦いだったように思います。徐々に身体が動けなくなる主人、歩いていたのが車椅子になり、次第に車椅子にも乗れなくなり、食事も通常の食事ができなくなり、ベッドで身体を少しだけ起こして僅かな量の食事を摂るだけになり…と、急速な主人の変化に私の心が付いていかず恐怖と悲しみと不安の毎日でした。

そんな状態の私を支えてくれたのが、やはりゲシュタルトでした。
主人の容態が悪化する中、私はその苦痛を人に話すことができませんでした。だって、そんな話を聞いた人はどんな声を掛けていいか慰めの言葉すら浮かばず困ってしまうことは想像が付きます。だから自分で耐えるしかないと思っていたのです。
そんな中、あるワークショップで私がLiv Estrup (リブ・エストラップ)さんからワークを受けたときのことです。
私は主人の話はテーマとして扱わないつもりでした。しかし、ワークの流れで私が主人のことをテーマに扱っていないことに焦点が当たりました。
今の私の一番大きな問題はこの悲しみと恐怖なのに『今ここ』の私として扱っていないことが不自然だったのでしょう。
そして、私はこの件に関しては扱っても何も解決できない問題だと伝えました。
そこからワークは私の在り方に焦点が当たり、苦しみを一人で抱え込む癖を見つけ出したのです。
Livは私に新しいチャレンジとしてサポートを受けることを体験させてくれました。
私の心の痛みを受け取ったLivは、「あなたが辛い心境をシェアすることは私にとっても嬉しい経験になります」と伝えてくれました。
それは、本当に新しい体験であり、安心と優しさに包まれた体験でした。人生の困難な時に誰かに話をすることや誰かにサポートを求める大切さを知ったワークでした。

Livがワークの中で「人生の困難な時の“痛み”は“辛い”と云うことと少し違いがあります」と私に言いました。
それは、人生の困難な時期をどのように乗り越えていくのか、じっと我慢をして耐えていくのか、それとも人からのサポートをもらい乗り越えていく選択をするのかと、その選択で困難な状況は苦しみや辛さだけでなく、違うことも受け取れると言うことです。

お陰で、私はそれ以来、主人のことで辛くなった時は信頼できる友人に助けを求めることができるようになりました。
そうやって、在宅介護の大変な時期や死を目前にした辛い状況でも心は救われることができたのです。

今、感じていることは主人が癌になった体験を通して悲しみと同じほど、人から受けた愛の大きさです。これほどまでに“愛”を受け取った実感は今までなかったように思います。それは、悲しい出来事を通して得たギフトです。

人生誰でも困難な状況になります。
それを辛い体験にするのではなく、自分生き方の選択によって豊かな体験にもなるのだと知りました。
ゲシュタルトは常に「どのように生きるか(生きているのか)」を自分に問いかけていきます。それが、こんなに人生の辛いイベントも豊かなものにしてくれるとは…。

主人は最期、自宅で私と二人きりの時に私の手を握って眠りにつきました。
主人も私も今をしっかりと生き切った大切な時間でした。そして、私の現在の心境は寂しさと恋しさがありながらも、多くの愛を受け取って、とても穏やかな気持ちで過ごしていられます。