通り過ぎていく
2025年10月7日 20:15
鹿児島にある実家に帰省中です。ここはいま、老々介護の現場であり、たくさんの医療や福祉サービスの手をかりて、父と母が暮らす場所です。
父の負担が増すようになって、できるだけ時間をとって実家に帰るようにしています。何かをするためというより、娘の帰省が、介護に明け暮れる父と、ほとんどの時間をベッドの上で過ごす母の気分転換になるといいな、という思いです。
いま、ベッドに横たわる母と、そのベッド越しに見える庭を眺めていると、静けさの中、
「通り過ぎていく」ということばが浮かびます。そして同時に、胸のあたりを抑えられるような内的感覚があることに気づきます。
通り過ぎていく。時が、景色が、母が、命が、わたしが、通り過ぎていく。通り過ぎていく。
風が、揺れる木の葉が、庭に差し込む日差しが、通り過ぎていく。
抑えられた胸のあたりに意識を向けてみると、抑えているのはわたし自身であると気づきます。奥にあるものはいったい何か。わたしは知っている、そして、手のひらでそこに優しく蓋をしている。
わたしは、ただそれが通り過ぎるのを待っている。静かに、悲しみと共に待っている。