純喫茶
久しぶりに10日間のんびりする時間が訪れた。札幌で2日間のワークショップをして、次の週に釧路でワークショップをすることになり、その間はお気に入りの温泉と知らない町に泊まりながら移動することにした。
写真(札幌のライラックの花):T.S.エリオットの『荒地(あれち) 』を大学時代に読んでいた。これは札幌の公園に花が咲いていた。ライラックは札幌市の花とのこと。白の色のライラックが、香りが一番強い。
最初の2日間は定番の定山溪の温泉。正確には定山溪の手前にあるひなびた小金湯。ここは真駒内駅から送迎バスがでていて便利で流行っている。
俺の目当てはその宿の奥にある潰れそうな温泉宿、松の湯である。
松の湯の温泉は質がよい。露天の前には川が流れていて、新緑が心地よい。
夕方に散歩していたら、鈴を腰につけたお巡りさんがいた。
それは熊避けですかと話しかけてみた。色々聞いたら熊でも人間に興味を持つやつがいて近づいてくることもあるらしい。それじゃ鈴は役に立たない。近くの観音岩山まで登ろうとしたけど諦めた。
さて、その後は札幌駅から釧路行きの電車で白糠町に降りた。この町に一つだけある旅館というかホテルに泊まるためにメインストリートの商店街に出た。辺りに人影はなく、霧が立ち込めていた。まるで映画の風景のように高倉健が霧の中から現れ出そうだ。
とても雰囲気のある街角だ。海岸に行くと流木が流れ着いている。カラスも都会のカラスと違い野性味がある。どこまで歩いても流木の海岸が続き、海鳴りが聞こえてきた。まるで地の底から沸いて来るような音である。
町に戻ると人のいない商店街の通りに、純喫茶があった。何故か心がときめき、吸い込まれるようにドアを開けて中に入った。
高倉健か宍戸錠はいなかったが代わりにお婆さんがいた。コーヒーを頼むとカウンターの中にもお婆ちゃんがいた。二人で純喫茶を経営しているのかと思いきや、ドアを開けて、また婆様が入って来て三人で話し始めた。どこソコの誰が何してる、病気だとか、線路を越えたじい様が亡くなった。
また次の婆様が何か持って来て、こら食べろ、等々、俺が二時間いたが白糠町の情報を全て知り尽くした。店を出て、フっと気がついたがコーヒー代520円を払ったのはおれ1人だけだった。
この街からバスで釧路さ向かったださ。釧路は世界三大夕日の一つらしい。本当だよ。