ゲシュタルト療法をファシリテートする、心理療法の専門家「ファシリテーター」がワークショップの雰囲気やセッションの内容などに触れるブログを紹介しています

GNJファシリテーターブログ

ファシリテーター:中山 史

中山 史

2006年幼稚園の母親学級で、GAF代表・有村凛さんと出会いゲシュタルトを知る。その後、ゲシュタルトを自らの育児に活かすためママ友と育児サークルを立ち上げ7年間活動。2011年ゲシュタルト療法ベーシックコース、2013年同アドバンスコース修了。2017年よりGNJスタッフ

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晴好雨奇

2024年1月11日 18:19

 月に一度、ご縁があって座禅に伺っているお寺さんからいただいたカレンダーにある言葉です。調べると、北宋の政治家であり文学者だった【蘇軾】の「飲湖上初晴後雨」の中に出てくる一節だそうです。晴れた日は、景色を眺められ美しく、雨の日も、普段見ることのない奇景を目にすることができて趣深いと述べています。

去年12月から、ずっと心の片隅に、このブログのことがありました。担当する順番が回ってきているのに、どうしても手を付ける気にならず、先延ばしにし続けていました。期限をとっくに過ぎた今朝も、寝起きからブログが気になり、でも取り組む気持ちになれず、ため息が漏れました。

そんなとき、ふと、カレンダーの一節が目に入りました。 カレンダーに添えられた画に意識が移ります。笠をかぶったお坊さんが、左手に杖をつき、景色を眺めているようです。「このお坊さんになってみよう!(ブログのネタになるかもしれない)」ととっさにひらめきました。

 旅の途中、小高い丘の上で霧雨に煙る景色を静かに見渡すような感覚が湧きました。杖を握る手に力が入ります。薄暗い中で、少し寂しさを感じます。握った杖に軽く体重を預けながら、しばらく遠くを見渡します。ひんやりとした空気と適度な湿気を感じながら、私自身が靄に包まれた存在であることに気づきます。進むべき道が見えず、進むならば、丁寧に、無心に、でも五感を研ぎ澄ませて杖を頼りに歩むこと。靄の中で立ち込める草木や土の匂い、雨音に混じる生き物の気配、湿った衣服の感触に気づきながら、一歩一歩進むこと。今は急げない。急がない。

先日、私事ですが、誕生日を迎え、50歳になりました。半世紀を生きたことになります。これまで、あまり年齢を意識して生きてはいませんでしたが、1〜2年前から「土に還りたい」という思いが浮かんでくることがありました。そして最近は、「あ。わたしは土に還ってる」と感じます。へんですよね?でも、その言葉を声にすると、とても身体にしっくりとくるのです。

織田信長で有名な「人間50年~」の歌からしても、50歳は節目の年。一度土に還った身として、生まれ変わるように生きるのもいいのかもしれません。これまでの人生経験を活かすというより、さっきの靄の中で歩を進めていた感覚を大切にしたい。

見た目は洗練されていないけれど、芯が強い杖。仏教の世界では錫杖と呼ぶそうです。修行僧が遊行の際に持つ道具のひとつとのこと。この錫杖、半世紀を生きたわたしのシンボルかもしれない。この杖を頼りに、五感を研ぎ澄ませ、自ら一歩一歩進む。晴れた日も雨の日も、うつくしい景色と不思議な出来事を楽しむ。晴好雨奇。

最後になりました。みなさま、新年あけましておめでとうございます。50歳のわたしも、どうぞよろしくお願いします。