ケーススタディ&FAQ

【ケーススタデイ】僕の防衛の膜(渡辺トヨ子)

クライアントについて

クライアントは、男性、 名前は正男(仮名)、 38才、 妹二人、両親は健在。
職業は中小企業のIT関係、アパートで独り暮らしをしている。
ゲシュタルトに初めて参加したときは(2年前)、軽度のうつ状態で休職中であった。
職場でいじめにあい自信をなくした。不眠、頭痛、眩暈で会社を休むようになった。
父親は銀行の管理職である。お酒を飲むと正男に長時間お説教して過大な期待をした。
母親は無口でほとんど意見を言わない。何を考えているかわからない。このような環境の中で正男は自分の意見を持たない、人の判断が怖い、人の期待に応えるような優柔不断な人生を生きるようになった。
初めてゲシュタルトの部屋を訪れた時は、入口の近くに座り小さく固まっていた。のちに正男の話によるといつでも逃げられるように入口の近くに座ったのだということだった。
ほぼ2年間のゲシュタルトを経て、今は部屋の奥に座っている。

ワーク

最近のワークショップの気づきである。(Cはクライアント Fはファシリテーター)

C 僕は感情表現が苦手のような気がする。感情表現すると相手に情報を与えることになる。特にネガテイブな表情は見せたくない。自信がない。何事もなかったようにとりつくろったり・・・
F 私もあります。時に応じていろいろ・・・
C 僕には壁があるように思う。僕の中にですよ
F どのような壁? 体のどのあたり?
C うーん、胸(手を胸に置く) 硬―いブロック。
F その壁と一緒にいてください。
  間
C この頑丈な壁がもっと柔軟で前に行ったり後ろに引いたりすればいいのにと思う。
F その思いと壁とともにいてください。
  間
C アレー(高い声)、ブロックだと思っていたのに・・・半透明な膜のようなものになった。
F 半透明な膜のようなもの・・・
C 相手を見ることもできるし・・・ちょっと色はうす黄色、その中にいると僕を守ってくれているようで安心
F 安心な自分を十分味わいましょう。
 間
F その半透明な壁自身になれますか?
C はい、僕は壁です。あなたを守っています。無事でいられるように見守っています。
F そう言われると正男さんはどんな感じ?
C 見守られていて安心、ありがたい、リラックスしています。
F 提案です。膜の反対側になって、膜を持った正男さんを見てみましょう。
C クライアント ー 膜 ― クライアント  の座布団を配置する。
 膜にはムチン(唾液の成分)が含まれていて、粘土のようなものも混ざっている。半透明でベージュ色。今は僕の周り全部に広がっていてのびたりちじんだりして、固まっていない。これは僕の防衛の膜だ。(声が大きくなる。)
F もう一度言ってみましょう。防衛の膜だと。
C 正男はあるだけの座布団を膜に見立ててクライアントの周りに置いた。
   わー でけいー横も縦も・・・すごくでけい
F ご自身の全身を感じてみましょう。
 
クライアントは座布団の中心に立ち、自分の胴体の存在を確認し、身長がのびて天井に頭がつくような感覚を味わう。満面の笑顔で座布団の中央に大の字に寝て全身を委ねた。

終わりに

今回のセッションはクライアントの内的な感覚とイメージに焦点を当てた。自分の感覚に気づいては表現して次の感覚へ進み、また気づいては次の感覚に進む。本能的な自然のプロセスであった。SE的に表現するとクライアントのフエルトセンスを扱い言語を持たない爬虫類脳にアクセスしたのである。