ゲシュタルト療法をファシリテートする、心理療法の専門家「ファシリテーター」がワークショップの雰囲気やセッションの内容などに触れるブログを紹介しています

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ファシリテーター:河村 葉子

河村 葉子

2006年に23年間勤めた企業を退職し個人開業。ゲシュタルト療法の哲学を基盤に、個人カウンセリング、ワークショップ、依頼に応じて教え、スーパービジョンを行う。現在もゲシュタルト療法とセンサリーアウェアネスを中心に生徒としても学び続けている。

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人は他者がいるから自分になる

2025年2月18日 14:47

昨年から父の介護が必要になった。
母が施設に入所して以来の独居生活である。
近年は重いものを持てなくなり
日を置いて外出も億劫がるようになったため
食品や日用品を定期的に届けることが必要だった。
次第に身の回りのことを面倒がるようになり
家族だけのサポート体制では賄いきれなくなった。

年齢による心身の衰えは当然あるが
彼が何もしなくなったことは
人との関わりがない生活
何の刺激もない生活が明らかに大きな要因だろう。

人の手を借りたくても経済的な余裕はない。
ぜひとも介護認定を受けることが必要だった。

介護認定を受けるには医師の診断が不可欠だ。
しかし彼は極端な病院嫌いで
私が3~4歳だった頃を最後に病院に行ったことがない。
具合が悪くて寝込んでいる時も
胸を押さえて顔色が悪い時も
前歯が抜けてなくなった時も
病院に行くことを拒否し続けてきた。

そもそも極端な外面と内面を持つ彼は
他人の世話になることいっさいを拒否してきた。
そんな父にとって
介護体制を整えるプロセスは
時に暴力的な、人権侵害と感じられただろう。

現在は週2回ヘルパーさんが訪問してくれる。
掃除、洗濯、ごみの分別処理等の生活支援と
父が拒否しない時には
着替えや清拭、レンジで温める食事も用意してくれる。

訪問が始まって1か月ほどで父に変化が起きた。
食事らしい食事はしなくなっていたのだが
食欲が出てきた。
用意してくれる食事を完食するようにもなった。
清拭も初めは拒否していたのが
今は途中からタオルを取り自分で拭くこともある。
帰り支度のヘルパーさんに
「もう帰っちゃうの?」と言うこともある。

毎回の報告を読みながら
ヘルパーさんたちに深く頭を下げる。
人は他者がいるからこそ自分になる。
つくづくとそう思う。