ゲシュタルト療法をファシリテートする、心理療法の専門家「ファシリテーター」がワークショップの雰囲気やセッションの内容などに触れるブログを紹介しています

GNJファシリテーターブログ

ファシリテーター:室城 隆之

室城 隆之

家庭裁判所調査官を経て、現在は江戸川大学社会学部人間心理学科教授(心理学博士)。精神分析的心理療法、集団心理療法、交流分析、ゲシュタルト療法を実践している。臨床心理士。公認心理師。再決断療法士。日本ゲシュタルト療法学会認定トレーナー。

プロフィールをもっと詳しく見る

私とゲシュタルト療法の出会い(1)

2022年1月16日 20:16

 私は現在、交流分析とゲシュタルト療法の実践を自分のライフ・ワークと考えていますが、私にとっては交流分析との出会いの方が、ゲシュタルト療法との出会いよりも前でした。私は大学(法学部)を卒業後、民間企業で営業の仕事をしていたのですが、就職して間もなく、人間関係につまずいて、抑うつ的になってしまいました。そして、絶望的な気持ちで街をふらふらしていたときに、フッと入った本屋で一冊の本に出会ったのです。
それは、加藤諦三さんの『自分を嫌うな』(三笠書房)だったのですが、おそらくその時に自分のことがすごく嫌いだったので、その本を手に取ったのだと思います。その本に書かれていたことは、私にとって、とても衝撃的でした。内容をはっきり覚えているわけではないのですが、たぶん、「あなたが自分のことを嫌いなのは、あなたのせいではない。あなたがそう感じるように、親が育てたからだ。」というような内容だったように思います。親の言うことが絶対で、それに反することは許されない環境で育ってきた私にとって、それは天地がひっくり返るような体験でした。ゲシュタルトの言葉で言えば、それまで地であったものが図になり、図であったものが地になるという、図と地の反転が起きたのです。
それ以降、私は夢中になって、加藤諦三さんの本を読みあさりました。『自信』『気が軽くなる生き方』(いずれも三笠書房)など、今思えばどの本も同じようなことが書かれているのですが(加藤先生、ごめんなさい)、その時は何冊も何冊も読み続けました。きっと、そこに書かれている考え方を自分の中に納めるために、それが必要だったのだと思います。その中の一冊に、こんなくだりがありました。それは、加藤先生が国際交流分析協会の大会に参加したいと思い、協会の会員ではなかったが、諦めずに交渉して、大会に参加することができたというような内容だったと思います。それは、加藤先生が、自分でやろうと思えば、何でもやれるということを示されたものだったと思うのですが、私はこの時初めて、加藤先生の考えの中に交流分析というものがあることを知ったのです。これが私と交流分析との出会いでした。私がゲシュタルト療法と出会うのは、まだ先のことです。続きは次回で。