座禅体験(八)
菩提樹
やがて沙門釈尊の体力は回復した。尼蓮華河を渡り、ブッターガヤーの菩提樹の下で結跏趺坐した。それから7日間、沙門釈尊は座禅をつづけた。欲望の火が消え去り、執着がなくなり、迷いを脱した。東の空に曙光の差し込めるころ、彼に浄らかな天眼が生じた。あらゆるものを、そのあるがままに見、あるがままに捉えることのできる天眼である。彼は「仏陀」になったのである。悟りを開いた「仏陀」―釈迦牟尼世尊、すなわち釈尊である。そのとき、35歳であった。29歳の時、故郷の釈迦国を捨てて出家された釈尊は、それから六年ののち、悟りを開いて仏陀になったのである。
そののち釈尊の生命の火が消える八十歳まで説法を続けられた。
釈尊の根本の教えは「縁起」である。
「縁起」というのは、この世の中に存在する一切の事物が、さまざまな条件(直接原因と間接原因)によって仮にそのように成立している。といったことを教えたものである。したがって、条件次第で、事物はさまざまに変化する。例えば、二メートルの棒は一メートルの棒に対しては長い。しかし、三メートルの棒に対しては短い。何と比較するかといった状態で、棒は長くなったり短くなったりする。絶対的に長い棒は存在しないのである。
下記の写真はネパールで私が撮った。27年前のことである。摩耶夫人の右脇を破って、後の釈尊が生まれたという伝説のレプリカを訪ねていた。生まれてすぐ「天上天下唯我独尊」と宣言したという。私はこのときゴーダマブッタに出会っていたかもしれない。

つづく